鬼系上司は甘えたがり。
それどころか、普段でさえ多忙を極めており、これからの年末年始にかけては挨拶回り等々でもっと忙しくなる主任を、本当にどうでもいい案件にズリズリと引き摺り込もうとしている。
なんなのこの人、バカなの!?
だからとばっちりを食うのは私なんだって!
しかし、しゃしゃり出るわけにもいかず、そのままヒヤヒヤしながら成り行きを見守っていると、どうやら主任も今回は負けじと反抗するようで、こめかみの青筋を二本に増やしながら、けれど顔には笑みを浮かべ、部長に食い下がる。
「だ、だから、部長のお好きなようにと……」
「何を言ってるんだい? それができないから新田くんにお願いしてるんでしょ〜。もう、新田くんって融通利かないとこあるよね~」
「……ッ。では、私のほうで上手いことしておきますので、報告だけ上げさせてください」
「うん、よろぴこ〜」
しかし、奇しくも軍配は部長に上がる。
年功序列、縦社会、悲しいかな“社会の仕組み”をまざまざと見せつけられた瞬間だった。
顔面にハリボテの笑顔を貼り付け、部長に一礼して自分のデスクに戻っていく主任の横顔が、笑っているのに鬼すぎて直視できない。