鬼系上司は甘えたがり。
けれど、ふと部長はどんな顔をしているのやらと気になった私は、恐いもの見たさの精神で、そちらにソロリと首を回転させてみた。
すると部長は、今まさに一仕事終えたような清々しい表情を浮かべながらポンと腹太鼓を打っているところで、一気に脱力してしまった私は勢い余って椅子から滑り落ちそうになった。
……ダメだこの人、もう置き物と化してしまえ。
そうこうしていると、何やら不穏で不気味な足音が背後から近づいてくる気配がした。
それは振り向くまでもなく--。
「オラ薪っ!ミーティングだ!」
「ひゃい!」
ザ・私の愛しのドSツンデレ彼氏様。
お決まりの台詞である「5秒以内」を発射される前に、私の手元にもある1月号の誌面サンプルを急いで掻き集めると、既にスタスタと先を歩いている主任の背中を慌てて追った。
そうして着いたのは、編集部のあるフロアの一つ上の階にある、8畳ほどの小会議室。
資料室も並ぶこの階は、用があるときにしか訪れないので元々の人通りも少なく、込み入った話をするにはうってつけの場所、そして、ウチの会社の密かな告白スポットだったりする。