鬼系上司は甘えたがり。
「へへ、修理屋さんのおじいさんが、これくらいならなんとか直せるって引き受けて下さったんですよ。大切な人の大事なものだって言ったら、こんなに綺麗に修理して下さって。引き取りに行ったときに見せて頂いたんですけど、あんまり綺麗すぎてちょっと涙が出ちゃいました」
「……そっか、ありがとう」
「いえ。主任が大事にしているものは私にだって大事ですから。ほんと、あのおじいさんに修理をお願いして良かったです」
「ありがとう、薪」
顔を上げ、二度、私の目を見てお礼を言ってくれた主任の目には、イルミネーションの光に反射して薄らとした水分の膜が見えた気がした。
そんな主任に再び私の涙腺は図らずも崩壊へのカウントダウンを始めてしまい、慌てて手で拭って気持ちを立て直すと、丁寧に箱から取り出し、自分の目線の高さまで持ち上げて四方から靴をまじまじと眺める主任を見つめる。
いけない、いけない、泣いたらお持ち帰りしてもらえなくなる。聖夜にそれは寂しすぎる……!
「履いてみてもいいか?」
「もちろんです」
ダメな理由なんてどこにもない。
むしろ早く履き心地を試してほしい、その革靴を履いた主任と早く並んで歩いてみたい。