鬼系上司は甘えたがり。
 
でも私、どこかで会ったことあったかな?

夜だし、焦っていたし、顔を見る余裕なんて少しもなかったから、もしも本当に会ったことがあるとしても、私には判断のしようがない。

知り合いなら声をかけてくれてもいいのになとは思うけれど、気づけない私も大概アホだ。

でも、特にコミュニケーションを取らずに行ってしまったところを見ると、ティッシュ配りとか美容室の勧誘なんかで何度か顔を合わせたことがある、という程度の人なのかもしれない。


……それはさておき。

とにかく、ここは少し主任にお説教だろう。


「主任、靴は放るモンじゃありません」

「そうだよな、ついテンションが上がってな」

「あと、主任こそ謝るべきでした」

「そこはほら、咄嗟に薪が出て行くからタイミングを逃したんだ。……悪かった、気をつける」

「はい、分かってくれたらいいです」

「……ん。すまん」


なによ、叱られているっていうのに、シュンとするどころか妙に嬉しそうな顔しちゃって。

こういうところにMっ気を疑われているって気づいていないんだろうか……まあ、叱られてニヤけた顔が可愛いから許してあげようかな。
 
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