鬼系上司は甘えたがり。
「てか、さっきの人、薪の知り合い? お前の顔見た途端、なんか固まってなかったか?」
「いえ。私も今、ちょうど同じことを思っていたんですけど、一瞬だったので。でも知り合いなら何か一言あると思うし、街でよく見かけるキャッチの人だったのかもしれないですね」
「そうか」
さり気なく話題を変えたことに、逃げたな……と内心思いつつ、聞かれて私も改めて考えたものの、申し訳ないけれど彼に見覚えはなかった。
向こうが覚えているのにこちらが覚えていないというのは、なんだかスッキリしないような、もやっとしたような気持ちになるけれど、本当にキャッチの人かもしれないし、あまり深く考えるのはよしたほうがいいかもしれない。
「履いてみたぞ、どうだ?」
「わぁ!すごくステキです!超似合ってます!あの、足に違和感とかないですか?」
「ねーな!」
「それはよかったです!」
だけど、主任がすこぶる嬉しそうだから全て良しとしようと思う。中敷きも変えて下さったようなので、違和感だけが心配だったのだ。
お互いニッコリ笑い合うと、その後はまた、修理した靴を履いた主任とイルミネーションの下を手を繋いでブラブラし、ケヤキ並木の大通りに幻想的に輝くページェントをたっぷり堪能してから主任の部屋にお持ち帰りしてもらった。