鬼系上司は甘えたがり。
今日はこれから、各部署に設置してあるモニターの画面から映し出される社長の新年の挨拶を拝聴し、事務仕事を急いで片付けてからの午後一番、以前、主任と出向いた際に出張でお会いできなかった老舗ホテルの広報担当である池畑さんにご挨拶に伺うアポイントを取っている。
主任と一緒に伺うことになっているから、その移動中とか、すごいことになりそう……。
そんな危惧をしていると、一瞬主任と目が合う。
もやっと笑みを浮かべて頭を下げ、前を向いて仕事に取りかかる体を取ると、しかし直後、背中に主任からの只ならぬ圧力を感じ、風邪でもないのに背筋がゾワゾワと粟立ってしまった。
この人、絶対何かする気だ。
恐い、午後が恐い……。
けれど、正午間際、主任に電話が入った。
話の内容はさすがに私の耳まで漏れ聞こえてくるはずもないのだけれど、「はい」「……ええ」などと相槌を打っている主任の声には普段の電話対応の時とは違って若干の堅さがあり、どうしても聞き耳をそば立ててしまう。
池畑さんからお電話だろうか、それとも別な懇意にしている営業先の方からだろうか、主任の対応の端々にあまり雲行きがよろしくなさそうな雰囲気が漂っているので、何だか心配だ。