鬼系上司は甘えたがり。
「本日から池畑に代わりまして、私、奥平(おくひら)が広報として御社の担当をさせて頂くことになりました。恥ずかしながら不慣れなもので、色々とご迷惑をおかけすることと思いますが、どうぞよろしくお願い致します」
現れたのは、主任と変わらない年齢の男性。
どうやら池畑さんの後任の方らしい。
「……いえ、こちらこそ、お忙しい時期にお時間を作って頂き、ありがとうございます。渡瀬と申します。よろしくお願い致します」
「ご丁寧にありがとうございます」
主任から話は聞いていなかったんだけどな、と若干面食らいつつも、名刺交換を済ませ、ロビーの片隅で紅茶を飲みつつ仕事の話を始める。
といっても、もともと主任が手掛けていた仕事を私が引き継ぐという形なので、以前『iroha』に載せて頂いていた誌面を参考にしながら、レイアウトや紹介文、見出しや記事の内容、予約の際に「『iroha』を見た」と言って頂くと付く特典サービスなどの話をまったりとし、ものの十数分で早々に談笑に入ってしまう。
「渡瀬さんは、今おいくつですか?」
「年明け2日に25歳になりました。どうせなら狙って1日に産まれたかったんですけど。奥平さんは、おいくつなんですか?」