鬼系上司は甘えたがり。
「ふふ、いくつに見えます?」
「うーん……28~9、ですか? ちょうど私の上司の新田も、それくらいなんですよ」
「あ、それは嬉しい。実は31です」
「え~、お若いですね!」
奥平さんの下の名前は英司さんというらしい。
老舗と名の付くホテルを相手にまるっきり一人で出向くのは、正直、緊張する気持ちのほうが大きかったけれど、奥平さんはさすがホテルマンらしく物腰柔らかで話しやすく、私の緊張はゆっくりだけど確実にほぐれていった。
ときどき冗談を交えて話すときの屈託のない笑顔が、主任とはまた違う年相応の若さと落ち着きを兼ね備えており、仕事中ながら、モテるんだろうなぁ、と余計なことを考えてしまう。
主任も華がある。ただし、黙っていれば。
けれど奥平さんはナチュラルに華があるので、どちらかというと、アクの強い主任よりも万人受けするイケメンさんだろう。……私はそのアクの強さにまんまと毒されているのだけれど。