鬼系上司は甘えたがり。
 



一時間後。

待ち合わせの時間ぴったりに像の前に着くと、すでに奥平さんは到着しており、「お待たせしてすみません!」と急いで駆け寄ると、彼はいつも通りの和やかな笑顔の中に開放感を滲ませながら片手を上げて合図をしてくれた。


「ふふ、時間通りなんだから謝らなくてもいいんですよ。でも、駆け寄ってもらえるのって、ちょっと嬉しいですね、恋人同士みたいで」

「はは……」


何度も頭を下げる私に奥平さんはそう言って笑ってくれたけれど、どう返事をしたらいいのか分からず、私は曖昧に笑い返すだけだ。

プライベートなことなんて奥平さんに話しているはずもなく、当然彼は主任との関係が一方的に断ち切られてしまっていることも知らない。

奥平さんと会っている間は、なるべく落ち込んでいる姿を見せないようにしなきゃ。


由里子にはあれからも何度か釘を刺されるようなことを言われたけど、私にはどうしても奥平さんが裏がある人には思えないし、実際に関わっていると、とてもいい人なことが分かる。

仕事でもネックレスの件でもお世話になりっぱなしなのに、これ以上の心配はかけられない。
 
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