鬼系上司は甘えたがり。
 
しかし。


「薪、騙されるな」

「へ?」

「あのとき、俺の居所を掴むために奥平さんに協力してもらったんだろ? 最後まで会わなかったけど、奥平さんだってあの場所に来ていたはずだ。俺たちの話を聞いていたからこそ、この人はあえて多賀野をここに引っ張ったんだ」

「……そういえば、奥平さんも向かってくれるって言ってましたけど、会いませんでしたね。となると、辻褄が合うような気が……」

「そうだ。薪が前にペンダントトップを失くしたときだって、本当に探していたのかどうかもなかなか怪しいモンだと俺は睨んでいる」

「え、」


主任は腕を組み、あろうことか大切な仕事相手である奥平さんに向かってそう啖呵を切った。

多賀野くんがこういう形で再び私たちの前に現れたことについては主任の読みにも一理あるとは思ったけれど、ペンダントトップのことについては、さすがの私も承服し兼ねてしまう。

「ちょ、ちょっと言い過ぎですよ……」と主任のスーツの袖をクイクイ引っ張り、その憮然とした横顔に早く謝って下さいと目で訴える。


「いえ、新田さんの仰る通りですよ」

「はいっ!?」
 
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