鬼系上司は甘えたがり。
 
「渡瀬さんがネックレスを落とされたのに気付いていないようでしたので、これ幸いとばかりに情に訴えてみたんですけど、渡瀬さんが思っていたより数段手強いお方で。雪の中を1ヶ月も探したとなれば、少しは俺になびいてくれるんじゃないかと踏んだんですけど、結果は噛ませ犬にもなれませんでした。……ちょうど新田さんとの関係が危うい時期でしたので、割り込むには絶好のチャンスでしたけどね。ふふふ」

「……、……」


けれど、奥平さんはあっさりと主任の主張を認め、なんと白状までしてしまうではないか。

やっぱりなとほくそ笑み、勝ち誇ったようにフンと鼻を鳴らす主任とは反対に、私の頭は衝撃続きの告白に処理が追い付かず停止する。


な、なんてことだ……。

以前から由里子は奥平さんのことを不審がっていたけれど、まさか本当に裏があったなんて。

これじゃあ、思わず背筋がゾッとするような虎視眈々感は元祖の主任といい勝負じゃないか。

何だろう、奥平さんってもう色々凄い……。


「多賀野をあなたの部下に引っ張ったのは、当然俺への当てつけですよね? 多賀野もなんだかんだでコイツに気があるようですし、今度は多賀野の力も借りて奪おうって魂胆ですか?」
 
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