鬼系上司は甘えたがり。
金曜の夜は、私にとって天国だ。
どんなに上司にしごかれても、週の半分は残業になっても、この日があるから頑張れる。
恋愛するには体力的にキツい。
でもときめきは欲しい。
そんな、24歳にしてちょっと干物系が入っている私--渡瀬薪(わたせ まき)にうってつけなのが、お手軽価格で恋を楽しめる恋愛映画。
あまり人がいない深夜の映画館で、甘〜いのから切な〜いのまで、恋愛と名の付く映画を観ながら一週間分の疲れを癒やし、いろいろな恋を疑似体験してキュンキュンするのが、3年前に就職してからの私の密やかな楽しみなのだ。
もはや心の拠り所と言っても過言じゃない。
広告会社の営業事務は特別ハードな職というわけではないけれど、仕事と恋を両立できるまでになるには、まだまだ修行が足りない。
もともとが外で遊ぶより部屋で自由気ままに週末を過ごすほうが好きなインドア派なので、恋のチャンスはそれほど多くはなく、恥ずかしながら、今までに“きちんとした”おつき合いをしたのは大学時代のときの一人だけ。
男の人はその元カレしか知らない私にとって、社会人になってからの恋は敷居が高く、どうしても恋か仕事かどちらか一方になってしまうような気がして、なかなか手が出ないのだ。