鬼系上司は甘えたがり。
 
「うん、それが、しばらく主任と組めって言われちゃってさぁ……。土俵が違うし、これからどうしたもんかと思ってるんだよねぇ……」

「え、主任と? マジで?」

「マジだよ。引き継ぎとか挨拶回りに一週間もらったんだけど、どこのお店も愛着あってさ。正直言うと、手放したくないっていうか、主任と組むのが末恐ろしいっていうか」

「……ああ、うん、鬼だもんね、分かるわ」


理由を話すと、さすがの毒舌美人も毒舌を封印してくれたようで、素直に同情されてしまった。

主任がデスクワークを主にする日は、ひっきりなしに怒号が飛ぶ、この編集部。

もしかしたら部長より権限があるんじゃないかと思うほどの超ドS・鬼畜指導の数々を由里子も幾度となく耳にしてきているため、主任の恐ろしさは身に染みて分かっているのだ。


「でもさ、主任ってすごい仕事デキるじゃん。腹を括って組むのも勉強になると思うよ? 私だったら、ちょっと立候補してみたいかも」

「またまた由里子さん、今でも十分いい仕事をしてるじゃないの。もっと完璧になったら恐れ多くて話しかけられなくなっちゃうって」

「ま、それもそうね!」
 
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