鬼系上司は甘えたがり。
 
肩を竦めて茶目っ気たっぷりに笑う由里子につられ、私もニシシと笑顔を作る。

由里子のこういう、毒舌だけど茶目っ気がある性格が、とっても可愛らしくて私は好きだ。

私一人だと、どうしても後ろ向きな考え方になってしまいがちだけど、同じことでも由里子に言われると、どうしてか前向きに考えられるようになっちゃうから不思議なんだよなぁ。


「私、主任と半年頑張ってみる……!」

「うん、頑張れ!」


私語はお互い、ここまでだ。

肩で大きく息をして気合いを入れると、ファイリングしていた顧客データを元に、担当を離れる旨の挨拶回りのスケジュールを組み始める。


一週間は長いようであっという間だ。

日中はほぼ外回りに出るとして、来月号の誌面のレイアウトや校正チェックもあるし、引き継ぎもできるだけ時間をかけてやってあげたいし、こりゃ、今週は毎日残業コース決定だな……。

お得意様の名前でどんどん埋まっていくスケジュール帳を眺めながら、仕事に没頭できる有難みと後輩に託さなければならない寂しさとで、つい、はぁ……と感傷的な溜め息が出てしまう。

でも、土曜日に主任が言っていたように、これは紛れもなく一皮剥けるチャンスだし、由里子が言ってくれたように絶対に勉強になる。
 
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