鬼系上司は甘えたがり。
予告編を見たときから“これは絶対号泣だ!観なきゃマズい!”とハートをがっちり掴まれ、公開を首を長くして待ちわびていたのだ。
顔や態度に出ないように気をつけていたにも関わらず無意識に浮かれていたらしく、今日はいつもより多めに主任に怒られてしまったけど。
「ぐずっ、う、うう~……」
ストーリー序盤。
少しずつ惹かれ合っていく2人のもどかしい距離の縮め方に、すでに私の涙腺は崩壊気味。
お互いに身分の差があり、現実では結ばれることのない2人が、それでも懸命に視線や仕草、間の取り方などで気持ちを伝えようとしている様が、愛しくて切なくて、いじらしい。
お願い、家を捨てて一緒に逃げてあげて……。
もう映画の世界にどっぷりだ。
「もう気持ちはハッキリしてんだろぉ、頼むよぉ~、家を捨てて一緒に逃げてやれよぉ~……」
すると、私が思ったことと同じことを涙混じりに呟く声が聞こえて、思わずそちらを向く。
3つほど離れた席でぐずっぐずっと鼻をすすりながら泣いているのは、見るとスーツを脱いでワイシャツ姿になったサラリーマンだった。