鬼系上司は甘えたがり。
確かに意志が弱そうな顔面だもんな……。
24年間連れ添ってきた自分の顔を思い浮かべながら、自分から行動するより周りに合わせることが多く楽ばかりをしてきた半生を振り返り、そりゃそうなるわな、と自業自得した。
ホテルの中に入ると、首元に手を当て、珍しく「アポなしだからなぁ」と自信なさげに呟いて広報担当者に会えるか話を聞きに行った主任と離れ、私はしばしロビーで待機することに。
直接ご挨拶ができるに越したことはないのだけれど、なにぶん老舗中の老舗だ、緊張する。
ドキドキしながら待っていると、しばらくして主任が一人で戻ってくるのが見えたので、今日は都合が合わなかったのだろうと、なんとなくホッとしてしまい、慌てて自分を叱咤する。
危ない、危ない。
こういうところが意志の弱い顔になるそもそもの原因なのだ、しっかりせい私。
そうして、いかにも担当者が不在で残念だという顔を作って主任が側まで来るのを待っていると、その主任は呆れ顔で私を見下ろした。
「……お前な、俺が一人で戻ってきたからって、あからさまに嬉しそうな顔すんなよな」
「バレてた!」
「ったく。今日は出張だと。良かったな」