鬼系上司は甘えたがり。
きっと心から呆れているのだろう、主任から発せられるオーラがイラッとしたものになり、私は敵襲を受ける亀の如く素早く首を引っ込める。
けっこう距離があったはずなんだけど……見えるときは見えちゃんだなぁ、気をつけないと。
「まあ、説教はここまでとして。ほんじゃあ、ちょっとそこら辺をぶらっとしてから帰るとするか。無料の足湯もあるらしいぞ」
「わあ、それはステキ!」
「この一週間、ほとんど歩き詰めだっただろうからな。来週からのために癒しておけば、どれだけハードでも持ちこたえられるだろうよ」
「……へ、へい」
主任め。
月曜から本格的に主任の下に付くからって、この機会に馬車馬のように働かせるつもりだな。
もしかして昨日までの怒涛の一週間を労ってくれているのかも、と期待してしまった自分の思考回路が、単純すぎて嫌になってくる。
そんなことがありつつ、わざわざ外まで見送りに出てきてくださった従業員の方に突然の訪問を詫び、足湯の場所を教えてもらうと、私たちは一礼して車に乗り込み、ホテルをあとにした。
足湯は、ここから車で5分ほどだという。