鬼系上司は甘えたがり。
 
「可愛いことが言えたご褒美」

「……、……」


声も出ず、がっぽり目を見開く私にいつものようにドSな顔で笑った主任は、私の体の横に付いていた手を戻し、元の位置に座り直した。

再び向き合う形になった主任は、立ち上がる前と変わらず何食わぬ顔で私を見ているのだけれど……いいいい、今っ!この人何した!?

私はといえば、あまりに突飛な出来事に頭が真っ白になり、震える指で主任が触れた部分をペタペタとなぞるだけで、何も声が出ない。


「何を驚いた顔してんだ。可愛いことを言えたんだ、褒美を授けるのは彼氏の役目だろ」

「……うぇいうぇい!?」

「その“うぇい”やめろ、可愛くない」

「はあぁっ!?」


しかし主任は、すぐさま暴言を吐く。

ていうかアナタはどこの殿様ですか!

キ、キスとか!勝手に!すんなってばっ……!!


腕を組み、フンと鼻を鳴らし、なぜか偉そうにふんぞり返る主任に開いた口が塞がらない。

数年ぶりのキスが主任ってどんな悪夢だろう、しかも知らない間に恋人になってるし、状況の急展開に一つも頭がついて来ないんですけど。
 
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