鬼系上司は甘えたがり。
けれど、怒ってばかりいても埒が明かない。
ここは不本意ながら私が大人の対応をするべきだろうか……と、うーむと頭を捻り、逡巡したのち、仕方なく私は口を開く。
「主任、もういいですよ。出来心とか弾みでとか、たぶん特に意味はなかったんですよね。UMAにでも舐められたと思って忘れます」
「は!? いや、その“ウーマ”って何だ?」
「……未確認生物。たぶん鬼も含まれます」
バックミラー越しに見えた主任の何とも言えない呆けた顔をチラリと盗み見て、私は内心、今のは上手かった!と自画自賛する。
河童やツチノコ、雪男もほとんど想像上の生き物なのだから、勝手に鬼もUMAに加えたところで誰が迷惑するわけでもないだろう。
これくらいの意地悪なんて、主任に唇を奪われた私の悪夢に比べたら可愛いモンだもんねー。
「おまっ、俺が下手に出ていれば……ずいぶんとデカい口が聞けるようになったじゃねーか。ウーマだかウーシだか知らねーけど、この屈辱はキッチリ返すからな。よーく覚えとけ」
「……の、望むところですよ!」
「フン、言ったな?」
「女子に二言はございません!」