鬼系上司は甘えたがり。
 
きっと今が一番ラブラブっとしたい時期だろう。

ハロウィンなんて楽しいイベントを彼氏と一緒に過ごさなくてどうするよ、ううう……。


「でも珍しいね、薪ちゃんから飲みに誘ってくれるなんて。何か相談したいことでもあるの?」


すると、主任に『了解です』と泣く泣く返事をしようとスマホをタップし始めた私に、意外そうな口振りで由里子が訊ねてきた。

なによ、私だってたまには気の置けない同期と酒を酌み交わしたいときだってあるさね。

でも、相談したいこと、かぁ……。

主任とのあれやこれやは由里子の言う“相談したいこと”の内容に含まれるのだろうか。

バナナはおやつに含まれますか?みたいな。


特に今まで考えたことはなかったけれど、そういえば主任と私の関係って一体何なんだろう?とふと疑問を感じて、スマホから顔を上げ、思わず宙をぼんやり見つめてしまった。

だって、普通に考えてやっぱり異質だ。

たまたま映画館で遭遇して、たまたま同じ趣味だと分かったからって、その日のうちに自分の部屋に上げてご飯をご馳走したり、“極度の甘えたがり”なんて秘密を暴露した挙句に私の膝の上で眠れたりするものなのだろうか。
 
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