鬼系上司は甘えたがり。
あぽーん……。
いつの間にか所用で社外に出ていたらしく、定時をだいぶ過ぎて帰社した主任にあっけなく捕獲され、この通り、無慈悲に彼の城へ連行されることになってしまった私は、主任に対して今まで感じたことのなかった種類の気まずさを胸に抱えながら、それでも成す術なく鬼の背中にトボトボと付いていくしかなかった。
もう!由里子とハロウィンのバカーっ!
*
「--で? なんですぐに返事しなかった? 既読スルーぶちかますとか、薪はどんだけ俺をおちょくってんだよ。悲しくなったわ」
主任の城、三度。
キッチンカウンターにスーパーの袋やら大型雑貨店の袋やらを大量に置いた主任は、近くの壁に添うように立ち、ビクビクと縮こまっている私を呆れた目で一瞥すると、そう訊ねてきた。
主任の所用とは、おそらくこのことだったのだろう--カウンターに転がり出てくるカボチャに次ぐカボチャ、またカボチャ、雑貨店の袋から覗くのはオレンジと黒のシンボルカラーがやたらと目につく飾りつけアイテムの数々だ。
風船、ハンギングバットに、ホラーテイストのハロウィンガーランドの一部と思われる『W』の文字、キラキラモール、その他諸々……。
どうやら主任は私とハロウィンするらしい。