鬼系上司は甘えたがり。
「……恥ずかしい。今日抱けると思っていなかったから、まだ先でいいと無精していたんだ」
「右に同じくです。今日抱かれると思っていなかったので、下着が上下違うんです」
「見たから知ってる」
「そうでしたか」
ちーん……。
運転席に乗り込む主任に続いて、私もカクンと項垂れながら助手席のドアを開けて乗り込む。
外の冷たい空気に当たったことによって冷静さが取り戻されたので、私たちの恥ずかしさはそのぶん増長され、お互い目も合わせられない。
それから数十分ののち、やはりビミョーな空気のまま車は最短ルートでお互いの用事を終え、再び主任の部屋があるマンションの前に戻ってきたものの、すっかり興が冷めてしまい、もうずいぶん前から乾いた笑いしか出てこなかった私たちの間には、さあ今からやりましょう!なんていう空気は微塵も流れていなかった。
……当たり前だけど。
「腹が減ったな。先にカボチャにしよう。薪は部屋をハロウィンにしてくれ」
「御意」
部屋に着き、ドラッグストアで購入した茶色い紙袋の例の物と、着替えや化粧品を詰め込んだトートバッグをそれぞれ置くと、まるで仕事のような会話を交わしながら作業に取り掛かる。