鬼系上司は甘えたがり。
 
時刻はすでに夜9時。

秋の夜長、とは言うけれど、お腹が満たされないことには夜長も楽しさ半減だ。

泣いたり怒ったり色々したので何か食べなければさすがに身が持たず、それを見越したのだろう、カボチャ担当の主任は、時折「あ〜……」とか「〜〜っ……」と声にならない声を上げて悶えながらも、スープにしたりサラダにしたり、グラタン、リゾット、果てはデザート用にマフィンの仕込みも始めて大忙しの様子。

対するハロウィン担当の私は、キッチンから漂ってくる甘いカボチャの匂いにぐ〜ぐ〜とはしたなくお腹の虫を鳴らしながら、風船を膨らませたり、コウモリをぶら下げたり、ホラー文字の『HALLOWEEN』をせっせと飾り付ける。

……こちらはとんだ秋の虫だ。


そんなことがありつつ、1時間もするとローテーブルの上にはカボチャ尽くしの料理の数々が所狭しと並べられ、私たちはだいぶ遅めの食事に文字通りガブリとかぶり付いた。

これだけ洋風の料理で統一されているのに、なぜか隅の方にちょこんと和風テイストなカボチャのそぼろ煮が置かれているのにププっと吹き出しつつも、それはもうガツガツと頂く。


「美味しいれふ!」

「ほうふぁ!」
 
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