鬼系上司は甘えたがり。
 
二人とも口に入りきらないくらい料理を詰め込んでいるので、何を言っているか分からない。

だいぶお腹が満たされてきた頃。

すっかりハロウィン仕様になった部屋を眺めながらシャンパンでも開けてラブラブっと食事、なんていうロマンチックな雰囲気とは程遠いことに成り果てている由々しき事態に2人揃ってようやく気づき、戦慄するも、もう遅かった。


カボチャ料理はあっという間に全て私たちの胃の中に収まり、空いたお皿の数々がどんなに凄まじい食欲だったかを如実に物語っている。

お相撲体型になったお腹をポンと叩けば中身が詰まっているイイ音が聞こえ、まるで月夜の晩にお寺で腹太鼓を打つタヌキのようだ。

お互いそんななのに、こんなんじゃロマンチックも何もあったもんじゃない。

数時間前まではすごくいい雰囲気だったのに。

準備というものは何事においてもやっぱり大事なんだなと痛切に思った瞬間だった。





それからしばらくして。

主任の肩にぐでんと頭を預け、日頃の疲れと満腹感からついウトウトしてしまっていた私を、主任が優しく唇を食んで起こしてくれた。


「あ……すみません、私ってば……」

「いや。どうする、もう寝るか?」
 
< 80 / 257 >

この作品をシェア

pagetop