鬼系上司は甘えたがり。
 
ショボショボの目を擦りながら「ん〜……」と肯定とも否定とも言えない声を出すと、ふっと口元を綻ばせた主任は「明日も明後日も休みだから無理はするな」と言って、私の頭をポフポフと撫で、再び自分の肩に引き寄せた。

その手つきがあまりに優しく、愛おしいものを心から愛でるような動作だったので、すっかり主任に身も心も委ねきっている今の私は、またうっかり、ウトウトと夢の淵に立ってしまう。

ああどうしよう、今すぐ主任に抱かれたい。

でも困った、もう体が言うことを聞かない……。

すると。


「今年は雰囲気もクソもないハロウィンになっちまったけど、来年は薪が喜ぶハロウィンにしてやるから。1年我慢して待ってろ。忘れるなよ、薪は来年も俺と一緒だ。ずっとだ」


うつらうつらと覚醒状態もままならない私の耳に、主任が甘い囁きとともに唇を這わせる。

息と唇のくすぐったい感覚に思わずモゾモゾと身をよじれば、少し困ったような声で「……襲ってもいいんだろうか」という呟きが聞こえた。


けれどすぐに思い直したらしい主任は、軽々と私を抱き上げると、まるで壊れ物を扱うような優しい手つきで隣の部屋のベッドへゆっくりと横たわらせ、せっせと布団まで掛けてくれる。

至れり尽くせりですみません……。
 
< 81 / 257 >

この作品をシェア

pagetop