鬼系上司は甘えたがり。
“極度の甘えたがり”だと言われておきながら、その実いつも私のほうが食事に体調面(主に眠気)にと全面的に甘えてしまっていることが、今になってすごく申し訳なく思えてくる。
しっかりと“甘えられている”という実感があったのは、今になって思えば、最初に主任の部屋に連れ込まれた際の膝枕の一回きり。
1ヶ月も前の、たかが膝枕のそれだけで、果たしてその欲求は足りているのだろうか。
ちゃんと彼女なのに、なんということだろう。
夢見心地で一念発起した私は、最後の力を振り絞って自分の思いを伝えようと口を開く。
「明日は……主任に……」
「ん?」
--いっぱい甘えてもらうんだから。
けれど、甘い声で続きを促されたものの、すでに意識の大半を手放してしまっていた私は、最後まできちんと言葉を紡げず--カクン。
そのまま心地いい眠りの中に堕ちていった。
こんな始まり方も、きっとありだと思う。
来年も、ずっとだと主任が言うんだから、不思議と何の疑いなくもなく、そうなんだろうなと思えるし、鬼がそう易々と“やっと”と口走ってしまうほどの下僕を手放すはずがない。