鬼系上司は甘えたがり。
 
主任はあの日、主任の気持ちも自分の気持ちも分からないとグズグズと泣く私に“やっと”と口走ったけれど、それは半年とか一年以内とか、わりと最近だろうと勝手に思っていた。

それが、由里子に言わせれば“もうずいぶん前から”だというのだから、一体いつから!?と驚愕したって、おかしい話ではないだろう。

だって私は、少しも好かれている気がしなかったし、なんやかんやと主任に主導権を握られ連れ込まれたり連れ回されたりしている間も、ちっともそんなふうには思えなかったのだから。


そんな鬼が、どれくらいの間、私を……。

正直、自分にそれだけの魅力があるとは思えないので、まずもって疑ってしまうのは、悲しいかな、主任の目は正常か!?説だった。


「あ、その反応だと、全っっっ然気づいてなかったみたいだね、薪ちゃんは。あのさ、よーく思い出してみてよ。薪ちゃんだけなんだよ、主任が下の名前で呼ぶ人。私はさ、主任が『薪』って呼び始めた頃から好きなんだろうな〜って密かに思ってたんだけど……まあ、火にくべて燃やすぞって言われてもねぇ。好かれているとは思えないわ。あはは、主任ドンマイ!」

「な、なんと……」
 
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