鬼系上司は甘えたがり。
一緒に頑張ろう、どんなに辛いことがあっても同期みんなで乗り越えようってあれほど約束していたのに……もうその2人の名前も顔も。
--思い出せない。
「今頃、どうしてるんだろうね」
「……そうだね」
由里子と2人、しんみりしてしまう。
結局、ゴールデンウィークが明けても出社してこなかった子に関しては、無難に五月病として扱われ、いつの間にかその子のデスクには派遣社員の子が座っていたように思う。
穏やかではない話だけれど、主任を訴えるとヒステリーを起こした子は、過度の指導をして申し訳なかったと主任が頭を下げることで、とりあえず事態は収束し、大事には至らなかった。
親御さんの話では、少し精神的に不安定なところがあるとかで、主任は新社会人として当たり前の指導をしていただけなんだから何も悪くない、こちらこそ申し訳なかった、と頭を下げ続ける主任を慰めていたようだったけれど。
一気に2人辞めていったあとは、さすがの主任もしばらく元気がなかったように思う。
「元気にしてるといいよね」
「うん」
由里子の言葉に、静かに頷く。
ほんと、元気にしていたらいいなと思う。
その言葉しかない。