鬼系上司は甘えたがり。
 
それからしばらくしても、しんみりムードは抜けず、私たちは結局、ビール一杯というほろ酔いにも満たない量のアルコールを摂取しただけで不思議居酒屋をあとにすることにした。

もちろん店をハシゴする気分でもなく、それぞれの彼氏の胸へ今すぐ飛び込みたい衝動を手近な相手をハグして宥める、という行為でもってとりあえずやり過ごし、月曜日からの新たな一週間を精いっぱい頑張ることを誓い合った。


「主任の念願が叶ったお祝いだったのに、なんかごめんね!そんじゃあね!ご馳走さまー!」

「ううん!また来週ねー!」


ブンブンと手を振る由里子に私も同じようにして振り返し、一路、主任の元へと足を進める。

ていうか、散々な言い方をしていたくせに、あれで主任を祝っていたつもりだったんだ。本人不在なのに、コレ主任のお祝い会だったんだ。

……あれ、私って何要員? お財布要員的な?

麻井由里子、やはり恐るべし。

いや、私も主任の片想いにゾッとしちゃったから、あんまり人のことは言えないんだけど。

そんな風に自他共に心でツッコミを入れながら道を歩いていると、赤信号の交差点で立ち止まったとき、ふと星を見たくなって顔を上げた。
 
< 94 / 257 >

この作品をシェア

pagetop