鬼系上司は甘えたがり。
けれど、都会の光に溢れたここでは、いくら目を凝らしても弱々しくしか星の瞬きを見ることができなくて、期待していた分、落胆も大きかった私の胸は余計に切なく痛むだけだった。
*
それから数十分後。
事前に渡されていた(強引に手に押し付けられたとも言う)主任の部屋の合鍵を使って入った部屋では、突如として現れた私に目を丸くした主任が、髪の毛からポタポタと雫を滴らせながら、まさに鬼の形相で詰め寄ってきた。
どうやらシャワーを浴びて出てきたところに遭遇したようなのだけど、その顔も無理はない。
「……おまっ、女子会が終わったら何時でもいいから俺を呼べってあれほど言ったじゃねーか。何をノコノコ一人で来てんだよ。途中で野蛮人に襲われたらどうすんだ、バカモノが!」
だってそう、主任との約束を破ったのだから。
けれど、その言葉の裏には恐いくらいの愛情がたっぷりこもっていることを既に知っている私は、コートの上からペタペタと私に触り、無事かを真剣に確かめている主任に笑う。
「えへへ。なんだか今日は、自分の足で歩いて主任の所まで行きたい気分だったんですよ」
「……む、なんだそれは」
「会いたかった、ってことです」
「可愛いことを言えば許して貰えると思うな」