歪んだ愛情【更新中】
それなのに、美海のために来たと言わんばかりに照れくさそうに笑う信吾に呆れていた。
知らない所で遊んでいるなら知らないままの方が良かった。
返信が遅れても優しかったメールは、きっとこの後ろめたさからの優しさだったのだろう。
でもあえて口に出さない美海は、その場を壊さないため。
作り笑いでその場を繕って、助手席に乗り込む。
助手席のシートが少し温かい。
きっとさっきまであの女の子が乗っていたのだろう。
助手席に少し染みこんでいる甘い香り。
美海の香水の匂いじゃない。
3人後ろに乗り込んでから、信吾が運転席に座った。
「ねえ、あたしのクッションは?」
慌ててトランクを開け、持ってきた肌触りのいいキャラクターのクッション。
これが美海の出来る精一杯の嫌味。
焦った顔で差し出す信吾を睨み付け、クッションを取り上げた。
目いっぱいに浮かぶ涙をこらえ、きつくクッションを握りしめた。
肩から下げたポシェットが震えている。
携帯を取り出し、信吾との写真の待ち受けを通り越しフォルダを開く。
目に溜めていた涙が引いていくのがわかる。
今、この空間で唯一のやすらぎを与えてくれる。
知らない会話が繰り広げられるこの車内で唯一無二の自分だけに与えられているメール。