歪んだ愛情【更新中】
「俺、そろそろ帰るよ」
千歳が立ち上がると信吾は無理矢理にでも止めようとした。
「明日急なバイトが入ったんだ。また誘ってよ」
上手い逃げ方だった。
千歳を見送り、美海も立ち上がる。
「信ちゃん、あたしも帰っていいかな?なんか体調悪いかも」
今から千歳と会う訳ではない。
でももう今日は帰りたかった。
信吾が心配そうに美海を見つめてくる。
「じゃあ俺も帰るよ」
信吾がそう言うのは美海の中では想定内だった。
これを狙っていたのだ。
「じゃあ帰ろう」
お金を置き、
信吾が美海の鞄を持った。
靴を履きながら美海は頭を下げてその場を離れた。
まだみんなと話す信吾を置き、先に居酒屋を出る。
「蒸し暑いなー。頭痛い」
手で顔を仰ぎながら美海は夜空を見上げた。
頭の中で信吾に言う言葉を並べていた。
早く、
早く信吾に告げなければ
自分が壊れてしまいそうだった。