歪んだ愛情【更新中】
鞄から急いで携帯を取り出し、信吾に差し出した。
見た所で証拠は一つもないからだ。
「何もない?」
「う、うん」
もしここで正直に答えたら
信吾は今すぐにでも千歳を殺しに行く。
確実に
確実に信吾ならやりかねない。
「考えたい。美海の気持ちはわかったから、もう少し俺にも考える時間を頂戴」
信吾はそれだけ言い残し
美海の家を出て行った。
重く深い溜め息を付き
美海は部屋を見渡した。
信吾の隣りで無邪気な顔で笑う自分がいる。
何枚も何枚も飾られいる写真。
でも最近の写真は一つもない。
どれも1年以上まえの写真だ。
1年、
1年美海は自分の気持ちを押し殺していた。
もう冷めていた自分の気持ちを
自分で知らないふりをしていた。
写真立てに手を掛け、
1枚1枚写真を抜いた。
写真を抜き終わり
携帯のボタンを押していく。
0、9、0、
美海の新しい思いが生まれる番号をゆっくり押していく。