歪んだ愛情【更新中】
美海の顔を強制的に窓を向き、
頬が赤く染まっていく。
痛みが徐々に右頬に走り出す。
熱くなる頬に自分の手を添えて、目を見開いて信吾を凝視した。
後悔するような顔はまったくしていない。
手を挙げたことを当たり前のような顔で美海を見下ろしている。
「叩いた…」
思わず漏れた言葉だった。
信吾が美海に暴力をふるう、
それは2人を知る人たちからしても
本人の美海からしても
異常な行動だった。
乗り上げた体を運転席に戻し、
煙草の火を点けながら低い声で、言えよ。と3文字を簡単に済ませた。
美海の目に涙は浮かばなかった。
あまりにも驚きすぎて
泣くことすら忘れていた。
目を丸くしながら
千歳を思い返すように話していく。
「合ったの、全部。ぴったりだった」
何も言わずにまたエンジンを掛け、
坂道を上っていく。