歪んだ愛情【更新中】
「言おうと思ってたけど、つい最近あいつに告られた」
「聞いてない!」
「だから!…ごめん。俺が悪い。でも何もしてない!向こうの一方的な好意なだけで、」
「そんなの信ちゃんの言い訳でしょ!もしこれがあたしだったら別れようとか言ってたでしょ?黙って遊んでたり、自分の知らない所で男の子から告白されてたら信ちゃん怒るでしょ?ため息付きたいのはこっちだよ!なんで、こんな、あたしばっかり…」
信吾のティシャツが美海に思い切り掴まれてしわになる。
ゆっくり離す手で涙を拭く。
その手を引き、強く抱きしめる信吾を振り払えなかった。
「もうしない!俺には美海だけだから!」
何度も聞いたこの言葉。
喧嘩の原因はいつも信吾。
いつも涙を流すのは美海。
抱きしめられた体の横で携帯が震えている。
「もういいよ。もうしないで」
体を引き離し、笑顔を向ける。
美海の笑顔に安心したのか、信吾も顔を緩ませた。
「良かった。俺、美海がいなかったら生きていけないもん」
ハンドルに頭を置き、白い歯を見せて笑う。
何度この笑顔に騙されて来たのだろう。
心に残るしこりをしまい込み、車を降りた。