歪んだ愛情【更新中】
別荘に着くなり、
勢いよく車のドアを閉め
信吾は足早に中へと入っていく。
信吾の背中を見つめながら
さっきの出来事が嘘だったのではないか、
と頬に手を添えた。
「何やってんの?早く入りな」
首を傾げ
振り返る信吾を見つめた。
さっきまでの目が嘘のように温かくなっている。
あれは信ちゃんじゃなかった、
そう思いこむように頭を振り信吾の後を追う。
別荘の周りに立つたくさんの木が葉をゆらし音を奏でる。
これから起こる何かを伝えるように木が騒ぐ。
すでに用意されていた夕食を眺め、
台所をうろついた。
信吾は先にお風呂に入る、と夕食を待つように美海に告げる。
軽い命令だった。
レンジで温めればどれも食べられるようになっている。
テレビもない、
携帯もない、
雑誌もない。
普段から暇なときに使うものが何もなく、
美海は久しぶりに出掛けた疲れから
そのままソファーで寝てしまった。