歪んだ愛情【更新中】
あの冷たい手は
信吾の心の温かさを伝えているような気さえする。
俺は今お前に優しくない、
と全身から伝わってくる。
むしろ
嫌いだ、
と言われている気分だ。
信吾はソファーから離れ
台所にある料理を温め始める。
美海は急いでリビングを飛び出し、
階段を駆け上がった。
ベッドに飛び込み、枕に顔を埋め、声を押し殺して泣いた。
怖い、怖い、怖い。
頭の中で何度もその言葉を繰り返す。
繰り返して、
繰り返して、
泣き崩れた。
あれは信吾じゃない、
そう言い聞かせる。
でも信吾を変えてしまったのは自分だ、
と顔を上げると急に涙が止まった。
「あたしが、浮気した罰。これは罰なんだ」
小さな声でその言葉だけを繰り返し、
美海は笑った。
「あたしが変われば、また優しい信ちゃんに戻るよね?」
優しかった昔の信吾を思い出し、
美海はまた笑った。
でも笑っているのは口だけだった。