歪んだ愛情【更新中】


箸を口に運ぶ美海を
信吾は優しい瞳で見つめる。


「電話したとき、みんなにちゃんとご飯食べろって言われた」


そっか、と笑みをこぼし
信吾は飲み終わったコップに麦茶をつぎ足していく。


ほら、あたしが普通に接すれば信ちゃんはこんなに優しい。

そう心の中で呟き、
また箸を口に運ぶ。


「明日は何する?」

「アウトレットでも行く?」

「何か買って」

「でたよ、美海の何か買って。俺それに弱いんだよ」


大丈夫、昔の2人だ。

いつもの信吾だ。


大丈夫、戻れる。

信吾は優しい。



同じ事を頭の中で繰り返し、
食べ終えた食器を片付ける。


洗い物をする美海の横で
信吾は冷蔵庫をあさっていた。


「あ、酒だ」

「飲みたい!」


信吾が冷蔵庫から取り出したのは
缶チューハイとビールだった。


どっちも好きじゃない、
と嘆く美海に明日カシスかマリブを買おうと
信吾は優しく微笑んだ。


< 167 / 241 >

この作品をシェア

pagetop