歪んだ愛情【更新中】


「どうして…」


一度もなかった。

美海を思い必ず信吾はつけていた。


「子どもが出来たら一生美海を縛れるね」


まったく笑っていない顔を見て、
体を勢いよく引いた。


思わず口を塞ぎ、
涙の溜まる目で信吾を睨み付けた。


「何だよ」

「こんなの信ちゃんじゃない!」


枕を思い切り投げつけ、
そのまま頭を抱えた。


「誰がこうしたんだよ!誰がこんな風にしたんだよ!頼むよ…」


前髪を力強く握り、信吾は目線を落とす。


初めて見る信吾の涙。

強くて、絶対に泣かない。

泣く美海を優しく慰めてくれる。


そんな信吾が
目の前で泣いている。


信吾の頬が濡れていく。


その姿を美海はただ呆然と見つめていた。


「頼むよ、俺に美海を傷つけさせないでくれよ…」


何も言えずにただ信吾を見つめた。

掛ける言葉すら見つからない。

そうだ、自分の責任なんだ。


そう思いながら、座り込んだまま動けずにいた。


< 177 / 241 >

この作品をシェア

pagetop