歪んだ愛情【更新中】
「やっと笑った」
目の前の椅子に腰を下ろし、
女の人は口元を緩ませた。
「さっきまでずっと険しい顔してたよ。私、モモ。旧姓が桃沢で周りからずっとモモって呼ばれてきたの。旦那も未だにモモって呼ぶの」
そういえば、店の前に立っていたとき
「モモ」と呼ぶ優しい声が聞こえてきた。
「旦那はムーヤン。宗彦だからムーヤンなの、可愛いでしょ?」
ムーヤンを見つめながら微笑むモモを見て、
美海はこの人はムーヤンを心から愛している、と思った。
目がまだ恋をしている。
「結婚してどれくらいですか?」
「もう8年経ったわ」
その言葉に驚いた。
2人ともまだ20代後半にしか見えない。
「20歳のときに結婚したの」
「あたし今20歳です」
「あら?そうなの?随分若く見えた」
元々童顔な美海は未だに煙草を買う時に年齢確認をされる。
高校生に間違えられる事も多かった。
「童顔なんで」
「いいじゃない。歳とった時に得するわよ!」