歪んだ愛情【更新中】
何も答えない美海をその場に放置し、
信吾は先へ歩き出す。
慣れ、というものなのか信吾に怒鳴られても涙は出なかった。
泣く事が出来なかった。
ゆっくりと立ち上がり、
信吾を追い掛ける。
重たい足を引きずりながら、別荘へと戻っていく。
帰りたい、
そう思いながら空を見上げた。
浮かぶのは元気いっぱいに笑うマナの顔。
優しく微笑む浅見の笑顔。
言葉は冷たいが優しい目で話しかける果南の顔。
そして、
愛情溢れた千歳の顔。
帰りたい、
その言葉を自分の中に押し込んだ。
いつかは帰れる。
その前に信吾の怒りを静めなければ話しにならない。
また同じ事を繰り返す。
信吾の心は今誰よりも傷ついている。
傷を治すのは美海にしか出来ない。