歪んだ愛情【更新中】
やっぱりお酒飲まなくて良かったね、と言いながら美海は車のドアを開けた。
浅見が煙草が無くなった、と嘆きだし山を下りて煙草を買いに行く事になった。
「あたしも煙草買う。ずっと信ちゃんの吸ってただけで、自分の吸ってない」
美海は嬉しそうに外を眺めた。
「さっき亮介と2人きりになった時、何話してたの?」
「え、浅見の話だよ」
「男と2人きりになるな、って言ったよね?」
亮介くんだよ?と首を傾げる美海に容赦なく、信吾の怒りは続いた。
「関係ないから、誰とか。俺以外だめ、信用できない」
信吾の言葉に思わず溜め息を漏らす。
異常だ。
もうここまでくると前の束縛とは違う。
信吾の束縛は今に始まったことではない。
でも慣れがあったのか大抵の束縛には従った。
信吾の連れは許されてきた。
でもそれも許されないとなると、束縛はかなり増した事になる。
「溜め息?自分がしたこともっと自覚しろよ!」
信号待ちをしていると、
信吾の拳が美海の額に飛んで来た。
さすがに痛みを感じ、
痛い、と小さく言葉を漏らす。
でもさらに勢いを増して、拳が飛んで来た。
「俺の心の方が痛いんだけど」
窓ガラスに映る顔が泣き出しそうだ。
額のど真ん中が赤くなっている。
「ごめんなさい」
ただ謝ることしかできない。
ただ信吾を落ち着かせることしかできない。
このままじゃいつか本当に殺されてしまう。