【完】俺のこと、好きでしょ?
そう決めて、ふと辺りを見渡した。
「あ、これ……」
たくさんのキャンバスが置かれている、その中のひとつの絵が目に止まる。
全て、美術部員の子が書いたものだろうか?
もうすぐ展覧会だし、ほとんどが完成間近のものばかりだ。
だけどこの絵は……。
「すごく……キレイ……」
絵の良さというものは、それぞれに個性があって比較するものではないと思う。
そんなことは頭でわかってるけど、この絵は、私の中で、一際目を引くくらいに美しかった。
もうすでに完成しているのだろうか?
紺碧の宇宙に浮かぶ、真っ直ぐに突き進む光輝く星。
タイトルは、『慧星』。
こんな美しい絵を描く人は、どんな人なんだろう……?
そんなことを思いながら、あたしはカバーの下に隠れる有馬くんの絵を見つめ、女性の横顔を思い出していた。