【完】俺のこと、好きでしょ?
あたしはそれを手に、もう一度有馬くんに近づく。
「有馬くん、よかったらこれ」
「なにこれ」
「絆創膏だよ。手、さっきのでケガしてたでしょ?」
擦りむいてた跡が見えたから気になってたんだ。
たぶん、画板が落ちてきたときのものだろう。
「よく見てんね」
「あはは。人間観察が得意なのかも」
「まぁ、余計なお世話だけど」
「え、でももう絆創膏だしちゃった。だから使って」
「…………」
既に絆創膏の包紙を取って、粘着テープ側を有馬くんに見せていたあたし。
しぶしぶ、仕方なくみたいに、有馬くんは絆創膏を手に貼らせてくれた。
「これでよし! じゃあ、またね!」
「……うん」
そっけない態度だけれど、喋れたことがちょっと嬉しかったから、あたしは上機嫌で手を振って美術室をあとしにた。
「……変な人」
ポツリとつぶやかれた言葉は、聞こえないまま。