【完】俺のこと、好きでしょ?
今までで1番近くの距離で、見つめ合う。
「じゃあ、お願い。俺を助けて」
「……っ!」
ドキッ。
甘えるようなその声に、あたしの心臓が大きく跳ねた。
思わず息を呑みこむ。
硬まってしまったあたしをおかしそうに見つめながら、彼は再び、あたしに近づき思わぬことを口にしたのだ。
「そういえば、ここに来る前に美術室に行ったんだけど……」
ち……近い近い近いっ!!
有馬くんの吐息が、直に耳に吹きかかる。
「あの絵、直してくれて、ありがとう」
……え、あの絵って……。
それはおそらく、有馬くんが引き裂いた棗先輩の絵のことだろう。
大丈夫。修復したことに後悔はしてない。
だって有馬くんに、感謝してもらえたんだ。
それだけで、十分だよ。