【完】俺のこと、好きでしょ?
「慧が初めて絵を描いたとき、この子には才能があると思った。けど、慧はいつも私の絵を見て、私の絵で学んで、その少ない知識の枠組みの中で絵を描いてる。だから、すごくもったいないことをしているの」
確かに、有馬くんも以前似たようなことを言っていた気がする。
自分は棗先輩の背中を追いかけてるだけ……みたいな。
「私は、決めた枠の中に留まることが嫌い。もっと貪欲に、自分の持つ可能性を広げたいと思ってる。だから、外に出てたくさんのことを学びたいと思ったんだ」
その言葉にハッとする。
きっと、それって……。
「……棗先輩、留学されるんですよね……?」
「えっ、美月ちゃん、知ってるの?」
棗先輩は、驚いたようにあたしを見た。
「はい。梓から、少しだけ話を聞いてて」
「そっか……。清水さんと仲良いんだね」
ニコリと微笑みながら、彼女は真っ直ぐな瞳で言葉を続けた。