【完】俺のこと、好きでしょ?
彼らはあからさまにマズイというような顔をして、ドアのところにいるあたしを振り返る。
「その絵に、何してるんですか?」
「いや、何って別に……なあ?」
「ああ。俺らはまだ何もしてねぇし……」
歯切れの悪い言葉を並べ、キャンバスに躊躇いもなく手を置いてる男子生徒の姿を見て、ふつふつと怒りが湧き上がってくる。
「まだ……?」
じゃあこれから、何かしようとしてたの?
許せない。
それは、有馬くんの大事な絵。
有馬くんの棗先輩への想いが詰まった、かけがえのない絵なのに……!
「ちょ、君、何そんなに怒ってんの?」
「これ、君の絵じゃないよね?」
「……違いますよ。違うけど……それはあたしの大事な絵に変わりないんです!」
有馬くんの大切なものは、あたしも大切にしたい。
好きな人の大事なものは……守りたいの。