【完】俺のこと、好きでしょ?
「有馬くん!ごめん、絵、汚れてない!?
たぶん、さっきの人たちには何もされてないはずなんだけど……!」
あたしは尻もちをついている状態から、そっと態勢を立て直し、座り込む。
「ちょっと待って…… そっち?」
有馬くんがポカンとしたまま何かを言っているが、あたしは急いで出血してない方の手でキャンバスの絵を持ち上げた。
そして、自分の血液で汚れてないことを確認すると、ホッと安堵の息をもらす。
「はぁ……良かった……」
有馬くんの絵、無事だった……。
「……いや、良くないよ」
「え? ……っ!!」
立っている有馬くんが、突然、あたしを上から覆うように抱きしめてきた。
その拍子に、キャンバスの絵を離してしまって、またパタンと倒れてしまう。
戻さないとって思うのに、体を動かすことができず、あたしは先程とは違う意味で余裕がなくなっていた。