【完】俺のこと、好きでしょ?



「何言ってるの、有馬くん。どんなにすごい画家でも、全く同じ絵は描き直せないことくらい、あたし知ってるよ?」


あたしは有馬くんの優しさが嬉しくて、ニヤけるのを抑えながら、笑って答えた。



どれだけ似たような絵が描けても。


有馬くんが先輩を想って描いた時間が詰まったこの絵を……再び同じに描き写すことなんて、できない。



「せっかく有馬くんが大事にしてきたのに、あの人たちのせいで台無しにしたくない」



それに、有馬くんには時間がない。


もうすぐで棗先輩は、ここを離れてしまう。


それまでに完成させて、棗先輩と向き合わなきゃいけないのに。



抱きしめられた腕が一瞬緩んだ気がして、有馬くんの胸の中に埋まっていた顔を、そっと上げてみた。


すると、思いの外近い場所に有馬くんの顔があって、ドキリと心臓が跳ねる。



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