【完】俺のこと、好きでしょ?
「昨日さ……棗に会えたよ」
すると、有馬くんから昨日の話題を持ち出された。
「あいつ、俺がいたことに驚いてた。当然だけどね。俺に何も言わずに行こうとしてたんだから……」
「…………」
あたしは有馬くんの隣に並び、絵を見つめる凛々しい横顔を目に焼き付けながら、話に耳を傾ける。
「あんたに連れてきてもらったって言ったら、どこか納得してた」
その時の様子を思い出しているのか、有馬くんは絵を見つめながら笑った。
「ちゃんと気持ちも伝えたよ。棗は俺の憧れだったこと……それと、好きだったってことも」
……え?
選定された語彙に首をかしげる。
〝好きだった〟……?
思わず見上げれば、有馬くんはどこか晴れ晴れとした表情であたしの方を見ていた。
棗先輩の絵ではなく……あたしのことを。